「フリー」を読んで

フリー : 「無料」からお金を生みだす新戦略
クリス・アンダーソン著,高橋則明訳,日本放送出版協会 (NHK出版), 2009.11

普段何気なく生活しているなかで、フリー(無料)のモノと言われると、なかなか見当がつかないと思います。 けれども、パソコンの電源を入れて、インターネットに接続した瞬間、無料(タダ)の世界が広がっていませんか・・・ ということに気づかされる一冊です(いまいちイメージのわかない方は一度、手にとってみてください)。

・・・Youtube、フリーウェアのソフト(パソコンのウイルス対策からデフラグ等々)、ブラウザまで全部無料です。 一体どうやって利益を上げているのか気になりませんか。 気になった方も分厚い本ですが、さらっと読んでみる価値はあると思いますよ。 特にお勧めの章は第14章「フリー・ワールド―中国とブラジルは、フリーの最先端を進んでいる。そこから何を学べるだろうか?」です。 ちなみにこの書評もフリーですけどね 笑。

原 篤史さん 基礎工学研究科 博士課程前期2年
(2010.11.5 掲載)

学生選書ツアーに参加して

現在、私は大学院生なので、研究のために図書館・図書室をよく利用するのですが、 必要な本に限って置いていなかったり、あったとしても、一冊しかなかったり、 研究室に所蔵されていたりと必要な本がなかなか入手しにくい状況が続いていました。 そんな時に、大阪大学の図書館やKOANで、図書館に所蔵する本を学生が選ぶ活動があることを知り、 学生選書ツアーに参加しました。 選書ツアーは、各図書館(総合図書館、生命科学図書館、理工学図書館、外国学図書館の4つ)ごとに 選書メンバーの人数が決まっており、私は、吹田キャンパスにいながら、総合図書館をよく利用することから、 総合図書館に配架する学生用図書の選書を希望し、採用されました。

選書の舞台になったのは、梅田にある堂島アバンザ内のジュンク堂書店でした。 大きな本屋さんで、大阪駅で下車して、四ツ橋筋沿いに地下道を歩いて行くと約7分かかるところにあります。 集合時間としてジュンク堂書店が開く10時前に、図書館のスタッフさんや選書メンバーと合流しました。 選書にあたって、図書館スタッフさんから、制限時間が2時間で、一人あたりの予算の目安として5万円程度ということを言い渡されました。 そして、ハンディスキャナーという道具を使って、本に記載されているバーコードを読み取って、新刊本を中心に、 総合図書館に所蔵していないものを選書しました。

私の研究分野は、インターネットなどの比較的新しいメディア領域を扱ったものなので、 新刊本を把握しておくことは、自分の研究にとってかなり重要なことです。 それゆえ、最初に、新刊コーナーを中心にインターネットに関する本を選んでいきました。 ジュンク堂書店では、各ジャンルで新刊コーナーを設置しているので、目当てのものを見つけやすく、早い段階で、 欲しい本を選書することができました。 また、私は選書ツアーに参加する前に、自分にとって必要であり、かつ、 総合図書館に所蔵されていない本についてある程度下調べをしていたので、 欲しい本は決まっていました。 しかし、実際は目の前に多くの魅力的な本があるので、悩みに悩んで選書し、気がつくとあっという間に2時間経っていました。

以上、学生選書ツアーについて体験談を述べてきました。 今回の学生選書ツアーについて、私が思うに、 学生が主体的に大学の図書館に所蔵する選書をする機会というものはめったにないことだと思います。 それゆえ、このような貴重な機会を提供してくださった大阪大学附属図書館に感謝したいと思います。

千葉和矢さん 人間科学研究科 博士課程前期1年
(2010.11.4 掲載)

千葉さんが選んだ本(一部)

私が選んだこの1冊

失われた建築の歴史』 Jonathan Glancey著, 中川武日本語版監修, 東洋書林, 2010

図書館での旅が自身内部への旅とすれば、外部への旅とは現場へ出かけていくことでしょう。 図書館で良質な書物と出会う醍醐味は、その内部(中身)が優れていて、かつ、自らを外部への旅に誘う本と出会えることです。 この本は、世界の、人類の永遠に失った建築物140点以上を集め図版とともに紹介しています。さあ、出発しましょう。

いや、待ってください。この本に紹介されている建築物はすべて失われているのです。もう、現存していません。 いわば、記憶の集積です。それらが逆説的に世界や建築物に対する想像力を強く刺激します。 どのような建築が紹介されているのか。神話的建築(バベルの塔)、戦争によって失われた建築(ドイツ国会議事堂)、 神の御業(ボンベイ・ヴェスヴィオ火山の噴火)から想像世界の建築(「2001年宇宙の旅」)、 製図板に残された夢(スターリンのソヴィエト大宮殿)まで多岐にわたります。

われわれの歴史は空間認識、たとえば懐かしい建物や場所の記憶とともにあります。 建築物が歴史遺産になることからもわかります。 世界史や日本史の教科書にはたくさんの建築物が登場し、各時代を規定しました。 建築物にも寿命はあり、天寿を全うするものもあれば、短命に終わるものもあります。 それを偉業と捉えるか儚さと受け止めるかは、各人それぞれでしょう。 建築物と記憶について思いを馳せることができる大判の書籍です。

日本の近代建築について興味のある方は、
『昭和モダン建築巡礼 西日本編』『昭和モダン建築巡礼 東日本編』宮沢洋・磯達雄、日経BP社、2006-2008
『失われた近代建築 1 都市施設編』『失われた近代建築 2 文化施設編』増田彰久・藤森照信、講談社、2009-2010
がとてもおもしろいです。 前者については現存の建築物が主に取り上げられているので、現場を訪れることができます。 しかし、現在進行形で取り壊しが進行しているので、あるうちに見に行ってあげてください。

このような大部かつ高額な書籍を選ぶ機会を与えてくださった図書館関係者の皆様にお礼申し上げます。

Aさん 人間科学研究科 博士課程前期1年
(2010.11.4 掲載)