懐徳堂文庫には、二幅の履軒<りけん>画像がある。一つは、「会虞 観天地第一」と題する履軒の自筆草稿3枚を上部に貼付したもの。その文は「朕、宇宙の間に遊ぶこと七十載」と書き出されていることから、履軒七十歳の寛政十一年(1799)の時点であるとわかる。この画は描線が重なっていることなどから、履軒その人を前にしての下絵である可能性が高い。いま一つは、「文清先生遺像」と題して画像の上部に履軒の墓礦誌銘拓本を貼り付けたもの。その画の構図は同じであるが、描線は前者よりも簡潔になっている。両者とも、下絵の段階のものであり、本画は発見されていない。ここに掲載したのは、この後者のものである。