大阪大学図書館報 第55巻第1号(通巻198号), 2022.3

新しい外国学図書館のご紹介

箕面図書館課 坂田

箕面市複合公共施設の外観

外国学図書館にとって、2021年度は周辺環境や施設の変化、さらに利用者層や提供するサービスの拡大を経験した節目の一年となりました。

旧図書館が移転準備のため閉館したのは2021年2月13日のこと。以降、図書館職員は約60万冊の蔵書や館内備品の引っ越し作業、また新図書館でのサービス提供準備に専念しました。1

1 引っ越し作業の様子は、大阪大学附属図書館Twitter(@OsakaUnivLib) で「#外国学図書館移転」のハッシュタグを付けて随時公開しました。

そして5月1日、ついに開館の日を迎えたものの、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言の発出により、図書館は臨時休館することとなりました。休館の長期化にともない、箕面キャンパスの学生・教職員向けに、資料の取り置きや事前予約による一時入館といった代替サービスの提供が始まります。
臨時休館期間の延長を経て、感染症拡大防止の対策を講じた上で通常開館が始まったのは6月21日のことでした。

6月21日以降、新しく生まれ変わった外国学図書館(箕面市立船場図書館)は一般開放された図書館として多くの利用者で賑わい、資料の貸出も好調です。
2021年7月から同年12月の6か月間の入館者数を、2019年度同時期の旧箕面市立萱野南図書館および旧外国学図書館の合計値と比較すると、約1.8倍の162,877人となりました。

2019年7月~12月の旧外国学図書館および旧萱野南図書館の入館者数の合計と、2021年同時期の船場図書館(新外国学図書館)の入館者数を比較するグラフ

新図書館の施設・サービス

図書館報読者の皆様にはぜひ一度新図書館まで足を伸ばしていただきたいのですが、まずは紙面上で、館内施設やご利用いただけるサービスをご紹介します。2
この1年の間に撮りためた写真とともにご覧ください。

2 館内の様子は大阪大学附属図書館公式YouTubeチャンネル にて公開中の動画でもご覧いただけます。


2階:活気あり親しみやすい図書館の玄関口

  • 箕面市立図書館の蔵書
    箕面市立図書館の蔵書が並ぶ2階にぎやかエリア
    箕面市内に在住・通勤・通学されている方(箕面キャンパスの学生・教職員を含む)、また北摂地域在住の方は、箕面市立図書館の貸出券を発行して本を借りることができます。
    ※箕面市内に在住・通勤・通学されている方は、大阪府内全域の公共図書館から本を取り寄せることも可能です(無料)。
    詳しくはサービスカウンターにお尋ねください。
  • サービスカウンター
    資料の貸出・返却のほか、貸出券の発行、1階書庫資料の利用案内を担当しています。
  • 展示コーナー
    箕面市立図書館の図書を月替わりで展示しています。展示テーマの選定や選書は、図書館スタッフが交代で担当しています。
    • 2021年11月16日(火)~12月15日(水)の展示「「鍋」と「土器」の世界」
      展示「「鍋」と「土器」の世界」の風景
      縄文時代と現代の私たちの暮らしを土器=鍋で繋ぐ展示です。
    • 2021年10月29日(金)~12月22日(水)の展示「神々(しぜん)と人々の綱引き」
      展示「神々(しぜん)と人々の綱引き」の風景
      新図書館と同じ建物内にある船場生涯学習センター(指定管理者:大阪大学)の生涯学習講座とコラボレーションした展示です。講座のテーマにちなんだ本を集めました。

3階:多様な学習スタイルをサポートする空間

  • 外国学図書館の蔵書
    2階から3階につながる階段3階参考図書コーナー3階雑誌コーナー3階大型本コーナー3階多読コーナー
    語学辞書や事典・辞典類のほか、国内外の雑誌や多読用の図書・絵本を取り揃えています。
  • 国立国会図書館/韓国国立中央図書館 デジタル化資料送信用端末
    各国立図書館がデジタル化した資料の画像閲覧と複写(有料)が可能です。
  • レファレンスカウンター
    文献の検索・入手に関するご相談を受け付けます。蔵書検索の方法から海外の文献の入手方法まで、お気軽にお尋ねください。
    他大学や研究機関から資料を取り寄せることもできます(有料)。
    また、後述のAVライブラリーや研究個室の利用申込みもこちらで受け付けます。
  • AVライブラリー
    3階AVライブラリー内の棚3階AVライブラリー内の資料視聴用ブース
    DVDやCD、VHS、LD等の視聴覚資料を仕切りつきのブースで視聴できます。日本の名作のみならず、海外作品も多数取り揃えています。
  • ラーニング・コモンズ るくす
    3階ラーニング・コモンズ るくす3階ラーニング・コモンズ るくす内の展示コーナー
    本来は会話可・椅子やテーブルの移動可の自由な学びの空間ですが、現在は感染症拡大防止のため座席を固定し、個人学習のための部屋として提供しています。
    また、外国学図書館LS (ラーニングサポーター、大阪大学附属図書館の大学院生スタッフ)の活動拠点もこちら。頼もしい先輩方から学習や課題、語学や留学に関するアドバイスをもらえます。
    さらに、外国語学部の専攻語 で書かれた図書の展示スペースもあります。
  • AV コモンズ、グループ学習室
    3階AVライブラリー3階グループ学習室
    現在は感染症拡大防止のため閉鎖中ですが、大人数での学習に使える施設もあります。

4階:研究・学習に専念できる静かな空間

  • 外国学図書館の蔵書
    4階吹き抜け周辺
    学習用の一般図書はこちら。就職活動や資格取得に役立つキャリア支援図書もこの階にあります。
  • 研究個室
    4階研究個室
    研究や論文執筆に集中できる一人用のブースです。予約は当日のみ。Web予約が可能です。
  • 閲覧席
    大きな机の閲覧席吹き抜け沿いに並ぶ開放的な閲覧席と、仕切り付きで集中できる閲覧席
    吹き抜け沿いに並ぶ開放的な席、仕切り付きで集中できる席、辞書・事典や新聞を思いのままに広げられる大きな机の席など、場合や気分に応じて使い分けられます。電源も備え付けています。

1階(書庫)

  • 外国学図書館の蔵書
    1階書庫の書架(一般図書)1階書庫の書架(製本された新聞)
    一般図書に加えて国内外の雑誌のバックナンバー、世界各国の新聞、個人文庫、大阪外国語大学から引き継いだ貴重書等、併せて約48万冊を収蔵しています。
    2階サービスカウンターにてお手続きいただくことで、書庫内の資料を自由に閲覧いただけます。一部の資料を除き貸出も可能です。

館内施設は一新されましたが、クラス・ゼミ単位での図書館ガイダンスや自由参加型の論文検索ガイダンス、LSによる学習相談や講習会など、旧図書館時代に提供されていたサービスはいずれも新図書館に引き継がれています。

地域連携に向けた取り組み

以前と変わらぬサービスを提供する一方、地域社会との連携に向けた新たな取り組みも始まっています。

2021年10月には、箕面市立船場図書館の蔵書と大学図書館の蔵書をそれぞれ使ったコラボレーション展示を開催しました。
ノーベル文学賞を受賞したアブドゥルラザク・グルナ氏にちなみ、3階ではアフリカ文学に関連する本を、2階では東アフリカの歴史・地理・社会や難民・移民に関する本を展示しました。

3階の展示「アフリカ文学のとびらをたたく14冊+α」のポスター
「アフリカ文学のとびらをたたく 14冊+α」のポスター
3階の展示「アフリカ文学のとびらをたたく14冊+α」の様子
3階の展示「アフリカ文学のとびらをたたく 14冊+α」
2階の展示「東アフリカ、 難民・移民に関する本」の様子
2階の展示「東アフリカ、 難民・移民に関する本」

12月にはノンフィクション作家・高野秀行氏による講演会(主催:大阪大学外国語学部)に共催として参画したほか、高野氏の著書22冊を館内および講演会場で展示しました。

さらに、言語文化研究科の先生方からは館内の施設・設備を利用した子ども向け読み聞かせイベントのご提案をいただき、2021年10月に「デンマークの絵本『フィン・フォトンさんと量子力学』の世界」、12月に「みんなあつまれ!ハンガリーのクリスマス」、2022年3月に「楽しく学ぶ台湾の世界」が好評のうちに開催されました。

「デンマークの絵本『フィン・フォトンさんと量子力学』の世界」のポスター「みんなあつまれ!ハンガリーのクリスマス」「楽しく学ぶ台湾の世界」

今後も図書館職員による生涯学習講座の開講など、市民の方々を対象とするイベントの開催や情報発信を予定しています。

100年前の新聞記事から

本稿を締めくくる前に、とある新聞記事をご紹介します。

記事の題は「軈(やが)て公開する外語校の図書館」。大阪大学外国語学部・言語文化研究科言語社会専攻・大阪大学日本語日本文化教育センターの前身にあたる大阪外国語学校が最初の入学式を開催した3日後にあたる1922年4月20日、大阪朝日新聞に掲載されたものです。

本文には

「同校では是等の書物を学校だけに独占するのは惜しむ可きことであるのみならず大阪には図書館の設備甚だ不十分であるから行々は学校の図書館を公開して市民の為めに利便を与えたいと希望して居る、若し之が実現すれば同校は市内でも知識階級の人の多い地域であるから市民の為めには非常な利益である」

とあり1)、なんと開校当初から学校付設図書館の一般開放が構想されていたことが分かります。

記事は続けて大阪外国語学校紀要・講演録・海外視察報告の出版計画に言及し、最後は

「斯くして学校が単に学生を養うのみならず社会に直接有益な知識を供給し教育の社会化という現代の理想を遺憾なく実現しようというのが学校の意気込である」

と結んでいます。

※引用に際して、旧かなづかいは現代かなづかいに、旧字体は新字体に改めた。強調は引用者によるもの。

その後時は下って大阪外国語大学と大阪大学が統合した2007年、「大阪大学附属図書館と箕面市立図書館との連携協力に関する覚書」が締結されます。
これにより、外国学図書館蔵書の箕面市民への貸出や、箕面市立図書館蔵書の本学関係者への取り寄せ等のサービスが始まりました。

そして2021年、大阪大学箕面キャンパスは箕面市粟生間谷から同市船場地区へと移転しました。
新キャンパスのデザインにあたっては地域との一体性や連携が強く意識され2)、外国学図書館もまた、公共図書館・大学図書館の両機能がシームレスに繋がる空間に入居することとなりました。

国立大学法人が大学図書館機能を兼ね備えた市立図書館を運営することは、国内でも初めての取り組みです 3)
大学の有する知的資源を一般市民にひらくという100年前の理想がある程度の実現をみていたところ、この度の移転により、外国学図書館はこの理想を「地域社会との連携・共生」という現代の文脈においてさらに展開していく機会を得たといえます。

新外国学図書館には二つの命題があります。
ひとつは、学術情報資料の収集、整理、保存および提供を通して箕面キャンパスの皆様の教育研究・学習活動を今まで以上に力強く支援すること。
加えて、地域社会と連携し学内・学外という垣根を越えて、活動エリアを共にする人々や、知りたい・学びたい・考えたいという願いを共有する人々のよりどころを作り上げること。

100年前の大先輩が描いた理想を、今この図書館でいかに実現していくか。外国学図書館の挑戦は続きます。

参照

  1. 軈て公開する外語校の図書館. 大阪朝日新聞. 1922-4-20, 朝刊, p.3. 聞蔵Ⅱビジュアル, http://database.asahi.com/, (参照 2021-03-10).
    ※聞蔵Ⅱシリーズは大学・公共図書館など法人向けの有料サービスです。
  2. 大阪大学 箕面新キャンパス施設整備委員会. “箕面新キャンパスのコンセプト”. 大阪大学. 2017-09. https://www.osaka-u.ac.jp/ja/guide/campus/projects/files/minoh_concept/@@download/file, (参照 2022-03-10).
  3. 野原亜希, 日髙正太郎. “E2427 – 箕面市立船場図書館の開館:指定管理者としての取り組みから”. カレントアウェアネス・ポータル. 2021-09-30. https://current.ndl.go.jp/e2427, (参照 2022-03-10).