大阪大学図書館報 第56巻第1号(通巻199号), 2023.3

「国立国会図書館個人向けデジタル化資料送信サービス」利用のススメ

図書館サービス課 宮地
箕面図書館課 坂田
学術情報整備課 池松

2022年5月に始まった国立国会図書館の「個人向けデジタル化資料送信サービス」、もう利用者登録はお済みですか?

Googleではヒットしない明治・大正・昭和期を含む幅広い年代の資料をご自分のパソコンやスマホから気軽に閲覧でき、まるで文書館が自分の隣にやって来たような感覚を味わえる画期的なサービスです。ぜひご登録いただき、卒業論文の資料集めに、日ごろの研究活動に、また日常の調べ物にお役立てください。

国立国会図書館デジタルコレクション

※当記事内の画像は全て国立国会図書館デジタルコレクション(https://dl.ndl.go.jp/)より転載したものです。

国立国会図書館デジタルコレクション

国立国会図書館は所蔵している膨大なアナログ媒体資料(紙資料、レコード等)について、利用と保存の両立を図るためデジタル化を進めています。1)デジタル化した資料は、収集している電子書籍・電子雑誌といったオンライン資料とともに、『国立国会図書館デジタルコレクション』で検索・閲覧することができます。

このようなデジタル資料の本文は、大部分が国立国会図書館内、あるいは国立国会図書館の承認を受けた日本各地の図書館等(図書館向けデジタル化資料送信サービス提供館)2)のみでしか利用できませんでした。

しかし、2022年5月、個人向けデジタル化資料送信サービスの開始により、資料の利用方法が大きく変わりました。

個人向けデジタル化資料送信サービス

個人向けデジタル化資料送信サービス(以下「個人送信」)とは、インターネット公開していない資料のうち、絶版などの理由で入手が困難な資料を、自身の端末(パソコン、タブレット、スマホ)等で閲覧できるサービスです。3)コロナ禍において、デジタル化された資料の活用への要望が高まったことを受け、2021 年6月2日の著作権法の一部改正により、2022 年5 月19 日から開始されました。4)

個人送信により、図書館へ行くことなく、好きな場所で、合わせて約152万点(2022年7月現在)5)にものぼる国立国会図書館のデジタル資料を利用できるようになりました。

具体的には以下の資料が利用できます。6)

  • 昭和43年までに受け入れた図書の一部
  • 明治期以降の貴重書等や清代後期以降の漢籍等
  • 明治期以降に発行された雑誌(刊行後5年以上経過したもので、商業出版されていないもの)
  • 昭和63~平成12年に国立国会図書館に収蔵された博士論文(商業出版されていないもの)

こんな場面で便利!個人送信活用のススメ

1. 昭和40年頃までの資料の利用

個人送信を活用することで、これまでは入手が難しかった資料に、気軽にアクセスできるようになります。例えば、古典や昭和40年頃までに刊行された出版物を入手したいときには、まずは国立国会図書館デジタルコレクションで検索してみると良いでしょう。個人送信で利用可能であれば、図書館で借りたり他大学から文献を取り寄せたりする手間が省けます。

研究の参考資料になりそうな文献だけでなく、古典や推理小説等、著名な文学作品から大衆文学まで多数提供されています。この機会に、阿部知二訳のオースティン作『高慢と偏見』(『世界文学全集』第2集第6掲載)7)や、菊池武一訳のコナン・ドイル作『シャーロック・ホームズの冒険』(岩波文庫)8)といった名作を読んでみるのはいかがでしょうか。

中には面白い経歴を持つ作品もあるので、いろいろ探してみてください。例えば、当時、江戸川乱歩が訳したと話題になったアラン・ポー集(『江戸川乱歩全集』第13巻9)等、昭和初期の江戸川乱歩全集に掲載。初出は『世界大衆文学全集』第30巻10))は、現在は実際の訳者は別に存在しており、江戸川乱歩は名義を貸しただけだと判明しています。また、三島由紀夫著作の、キャロル原作『ふしぎの国のアリス』(あかね書房)11)は、三島由紀夫が児童向けのアリスを手掛けていたという、意外性が面白い作品です。

2. 博士論文の利用

博士論文の閲覧にも利用できます。近年の博士論文であればインターネットで公開されていることも多いのですが(※)、そうでない博士論文を読もうとすると、学位授与大学に赴いて閲覧する、あるいは複写物を取り寄せるなど、たいへんな手間がかかっていました。そのようなインターネットで公開されていない博士論文についても、一部は個人送信を利用すれば閲覧可能です。

博士論文一覧

※ 2013年4月以降に学位授与された論文は、インターネットを利用して公開されることになっています。多くは学位授与大学の"機関リポジトリ"(研究成果データベース)に収録されています。

3. 目次の利用

デジタルコレクションでは研究紀要や学会誌といった雑誌の目次を見ることもできます。

雑誌の目次と要旨は研究分野の研究動向を調べる際にも役に立ちます。一読することで、これまでの研究の流れや傾向の移り変わりを知ることができるからです。デジタルコレクションには目次情報も収録されているため、このような調査においても大いに参考となります。更に、気になった論文が個人送信で利用可能ならば、そのまま本文も閲覧できます。

雑誌の目次
※資料本編は公開不可のコンテンツであるため非表示

サービス利用方法12)

個人送信を利用するためには、

  1. 国立国会図書館の利用者登録(本登録)
  2. 個人向けデジタル化資料送信サービス利用規約への同意

が必要となります。

まずは以下のページより国立国会図書館の利用者登録(本登録)を行います。「簡易登録」では利用できませんのでご注意ください。

登録が完了したら、国立国会図書館オンライン(https://ndlonline.ndl.go.jp/)へログインします。ログイン後、「個人向けデジタル化資料送信サービス利用規約」13)が表示されるので、確認し、「同意する」ボタンを押してください。利用規約は「利用者情報」画面からも確認・同意を行うことができます。

以降は、国立国会図書館デジタルコレクション(https://dl.ndl.go.jp/)にログインすることで、個人送信の対象資料を利用できるようになります。

なお、Mozilla Firefoxのプライベートブラウジングモードでは資料を閲覧することができませんのでご注意ください。

基本的な使い方① 検索する

ここからは、「国立国会図書館デジタルコレクション」の基本的な使い方を簡単にご説明します。

トップページでログイン後、検索を行います。インターネットで利用可能なものだけ検索したい場合は、「ログインなしで閲覧可能」と「送信サービスで閲覧可能」にチェックを入れ、「国立国会図書館内限定」のチェックを外してください。

デジタルコレクション検索結果

資料タイトルや著者名などの書誌情報のみならず、資料本文のテキストデータも検索対象となります(古典籍資料、録音・映像関係資料、日本占領関係資料等を除く)。14)
ご自身の学習・研究テーマに関係するキーワードで検索すると、思わぬ発見があるかもしれません。

全文検索

基本的な使い方② 印刷する

個人送信で閲覧可能な資料を印刷(プリントアウト)することができます。

コンテンツ表示エリアの右下に印刷ボタンが表示されます。ボタンをクリックすることで印刷ダイアログが開き、印刷用ファイル(PDF)を作成することができます(1回の操作で最大50コマまで)。画質の調整もできますので、印刷ボタンをクリックする前に「画像調整」タブから調整を行ってください。15)

なお、スマートフォンで閲覧した場合、印刷ボタンが表示されません。横幅が大きい端末であれば、画面を横向きに変更することで印刷ボタンが表示される場合があります。16)

デジタルコレクション印刷ダイアログ

大阪大学附属図書館での図書館向けデジタル化資料送信サービス提供終了

附属図書館で提供していた図書館向けデジタル化資料送信サービス(図書館送信)は個人送信の開始によってその役目を終えたと判断し、2023年3月末をもってサービスを終了することとなりました。長年のご利用ありがとうございました。今後は、時間や場所の制限なくご利用いただける個人送信をぜひご活用ください。

参考

  1. “資料デジタル化について”. 国立国会図書館. https://www.ndl.go.jp/jp/preservation/digitization/index.html, (参照 2023-02-10).
  2. “図書館向けデジタル化資料送信サービス”. 国立国会図書館. https://www.ndl.go.jp/jp/use/digital_transmission/index.html, (参照 2023-02-10).
  3. “個人向けデジタル化資料送信サービス”. 国立国会図書館. https://www.ndl.go.jp/jp/use/digital_transmission/individuals_index.html, (参照 2023-02-10).
  4. “2022年2月1日 「個人向けデジタル化資料送信サービス」の開始について(令和4年5月19日予定)(付・プレスリリース)”. 国立国会図書館. https://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2021/220201_01.html, (参照 2023-02-10).
  5. “図書館向けデジタル化資料送信サービス”. 国立国会図書館. https://www.ndl.go.jp/jp/use/digital_transmission/index.html, (参照 2023-02-10).
  6. “図書館向けデジタル化資料送信サービス”. 国立国会図書館. https://www.ndl.go.jp/jp/use/digital_transmission/index.html, (参照 2023-02-10).
  7. 阿部知二 等編『世界文学全集』第2集 第6, 河出書房新社, 1963. 国立国会図書館デジタルコレクション. https://dl.ndl.go.jp/pid/1342456, (参照 2023-02-10).
  8. コナン・ドイル 作 ほか『シャーロック・ホームズの冒険』, 岩波書店, 1936. 国立国会図書館デジタルコレクション. https://dl.ndl.go.jp/pid/1181627, (参照 2023-02-10).
  9. 『江戸川乱歩全集』第13巻 (恐怖王), 平凡社, 1932. 国立国会図書館デジタルコレクション. https://dl.ndl.go.jp/pid/1173738, (参照 2023-02-10).
  10. 『世界大衆文学全集』第30巻, 改造社, 1929. 国立国会図書館デジタルコレクション. https://dl.ndl.go.jp/pid/1181074, (参照 2023-02-10).
  11. キャロル 原作 ほか『ふしぎの国のアリス』, あかね書房, 1952. 国立国会図書館デジタルコレクション. https://dl.ndl.go.jp/pid/1631695, (参照 2023-02-10).
  12. “個人向けデジタル化資料送信サービス”. 国立国会図書館. https://www.ndl.go.jp/jp/use/digital_transmission/individuals_index.html, (参照 2023-02-10).
  13. “個人向けデジタル化資料送信サービス利用規約”. 国立国会図書館. https://www.ndl.go.jp/jp/use/digital_transmission/pdf/individuals_tos.pdf, (参照 2023-02-10).
  14. “ヘルプ”. 国立国会図書館デジタルコレクション. https://dl.ndl.go.jp/help, (参照 2023-02-10).
  15. “個人向けデジタル化資料送信サービス”. 国立国会図書館. https://www.ndl.go.jp/jp/use/digital_transmission/individuals_index.html, (参照 2023-02-10).
  16. “ヘルプ”. 国立国会図書館デジタルコレクション. https://dl.ndl.go.jp/help, (参照 2023-02-10).