講習会でレベルアップ!-文献探索と入手方法を知る-
図書館サービス課 宮地
図書館では講習会開催のほか、様々なe-learning教材も用意しています。学習・研究にお役立てください。
文献探索と入手方法を学ぶ意義について
わざわざ講習会を受けてまで、文献の探し方や入手方法を知る必要があるのかと疑問に思う方もいるでしょう。確かに今日、情報は容易に検索し入手できます。例えばGoogleで「夏目漱石」と検索すれば膨大な検索結果が表示され、その中からWebページやPDFを選択すれば情報や文献は簡単に入手できます。しかし、Googleはどのような情報源を収録対象にしているのか公開されていません。つまり何が「検索できない」のかよくわからないうえ、そもそも重要な文献が検索結果に表示されてない可能性があり、本当に適切な文献が入手できたのか判断ができません。
このように、検索ツールによって特徴があり、向き・不向きがあります。語意を調べるには国語辞典を引くように、文献の探索においても目的や分野によってツールを使い分ける必要があります。例えば「夏目漱石」の先行研究調査ならば、『近代文学研究叢書』(昭和女子大学近代文学研究所)を確認したり、論文・研究書の参考文献を遡ったり、「国文学論文目録データベース」で検索するのも良いでしょう。どのようなツールが存在するのか知ることで文献探索に着手しやすくなります。
また、文献の探索と入手は異なります。昨今は情報の検索結果がそのまま情報の入手につながることも多いので混同しがちですが、例えば『漱石研究年表』(夏目漱石著『漱石文学全集』別巻,集英社,1974.)を読みたいとき、Googleで検索しても著者や出版社情報が分かるだけで本文を読むことはできません。本文を閲覧(=文献を入手)するには、図書を購入する、あるいは図書館で借りる等の手段を講じる必要があります。
以上のように、学習・研究の過程で文献を入手するとき、
- 欲しい文献情報について適切な手段を用いて探索する
- 適切な手段を用いて文献を入手する
という2つの工程が必要になります。
附属図書館では、この情報探索と入手について多くの講習会を開催しています。どの分野にも共通する基礎基本を紹介する講習会や、特定の分野に特化した講習会まで様々あります。そのうち、二つの講習会をピックアップして紹介します。
『卒論・研究きちんとスタート!シリーズ①学部4回生・大学院生のための日本語文献探索のキソ』(主催:総合図書館)
講習会の目的
学部の講義レポートから一歩踏み出し、より本格的なアカデミック・ライティングに挑戦するとき、文献の探索と入手はより重要となります。図書を3、4冊読んで内容をまとめるような課題のレポートと、課題を設定し新しい知識を論証する論文では、執筆に必要となる文献やその量が異なります。また、説得力のある論文を執筆するには、先行研究や参考文献における議論・主張を把握する必要があり、そのためには自身の必要とする知識に応じて文献探索を行う必要があります。
『卒論・研究きちんとスタート!シリーズ』の講習会では、先行研究調査の意義やデータベースの特徴といった文献探索の大前提となる基礎知識や、文献探索および入手のためのスキルをお伝えしています。以下ではそのうちの一つ『①学部4回生・大学院生のための日本語文献探索のキソ』について紹介します。
受講対象者
- 主に人文科学系/社会科学系の学部4年生・大学院生
- これから先行研究調査を行う方
- 日本国内の学術情報検索データベース(CiNii Books / CiNii Research)を使いこなしたい方
これから卒業論文に挑む学部4年生、大学院に進学して研究を行う大学院生の受講を想定した内容となっていますが、大阪大学に在籍する学生・教職員であればどなたでも参加可能です。早めに文献探索・入手の基本を身につけておきたい方、文献探索の基本をあらためて確認したい方はぜひとも受講してください。
内容
この講習会では以下3点を学習目標としています。
- 先行研究調査とは何かを知り、その意義を説明できるようになる
- 「芋づる式」(後述)調査の方法を理解し、先行研究調査に活用できる
- 文献データベースの効果的な利用方法を理解し、先行研究調査に活用できる
先行研究調査の意義やデータベースの特徴といった基礎的な知識を説明しつつ、先行研究調査の方法を二つ紹介します。
芋づる式
参考文献リストに掲載された文献を調査していく方法です。過去から現在までの研究の流れを把握し、また関連研究の文献を調査することができます。
芋づる式の起点とする基本文献には、参考図書、入門書、概説書がおすすめです。
文献データベースを使い検索する
学術文献の検索に特化したデータベースで調査する方法です。研究分野、日本語文献と海外文献、図書と雑誌論文で使用するデータベースは異なります。この講習会では、日本語図書の検索にCiNii Booksと国立国会図書館サーチ、日本語論文の検索にCiNii Researchを用いています。
データベースの検索にはキーワードの検討が非常に重要です。また論理演算子(AND/OR/NOT等)を用いたキーワードの組み合わせも重要であり、CiNii Researchで例を用いながら紹介します。
なお、文献データベースが提供するのはあくまでその文献についての情報(タイトル、著者、論文の場合は収録誌の情報)であり、必ずしもPDFファイルやHTMLで文献の本文を入手できるとは限りません。文献の探索と入手は分けて考える必要があります。入手方法については、『卒論・研究きちんとスタート!シリーズ②学部4回生・大学院生のためのフルテキスト入手法』で紹介します。
『医局秘書さんのための文献入手講座』(主催:生命科学図書館)
講習会の目的
文献情報を渡され手配を依頼されたとき、参考文献の本文を入手したいと思ったとき、まずは何を行うべきでしょうか。一つずつ検索エンジンから出版社のサイトを確認してはいないでしょうか。
『医局秘書さんのための文献入手講座』は、特定の文献を入手したいとき、どのようなツールを使い、どのような手順で入手すれば良いか、効率的な入手方法を紹介する講習会です。特に、生命科学分野でよくある例をもとに解説します。
なお、特定の文献の入手方法に焦点を絞っており、文献の探索方法(テーマ等で文献を探索する)については取り上げません。
受講対象者
- 生命科学分野の研究室に所属する事務補佐員
- 初めて大阪大学に所属する研究者
医学系・歯学・薬学研究科等の生命科学分野の研究室で、主に教員・研究員の補佐を行っている方を対象とした内容となっています。その他、初めて大阪大学に所属する方や、大阪大学での文献入手方法(大阪大学で閲覧可能かどうか確認する、等)に不慣れな方はぜひとも受講してください。
内容
講習会では以下の内容を紹介しています。
- 文献入手の流れ
- PubMedや医中誌Webから入手するコツ
- 参考文献リストやメモなどから入手するコツ
- 図書館・取り寄せで入手する
文献の入手方法は主に以下の3通りです。
- 大阪大学で所蔵・契約している文献を入手する
- 大阪大学以外の研究機関等から取り寄せる
- 直接購入する
まずは、「1.大阪大学で所蔵・契約している文献」かどうかを確認してください。入手できない場合は、2あるいは3の方法で、入手にかかる時間と費用を比較してより都合の良い方を選択しましょう。
大阪大学では大学の予算で多くの電子ジャーナルを購読しており、それらは大阪大学構成員であれば利用が可能です。また、電子ジャーナルが利用できなくとも、図書館において冊子で所蔵している場合があります。さらに、生命科学図書館は「外国雑誌センター館」です。「外国雑誌センター館」とは、国内未収集の外国学術雑誌等を体系的に収集・整理する拠点図書館のことで、生命科学図書館では医学・生物学系を担当しています。国内では大阪大学(あるいは生命科学図書館)でしか所蔵・契約していない雑誌も多数あります。
そのため、まずは大阪大学での電子ジャーナルの利用可否を確認し、次に紙媒体の雑誌の利用可否を確認してください。
大阪大学に文献があるかどうかを確認する方法について、「(1) PubMedから文献を入手するコツ」、「(2) 医中誌Webから文献を入手するコツ」、「(3)参考文献リストや先生のメモ等から文献を入手するコツ」と場合分けをして紹介します。「Osaka U.」のアイコンやISSN・DOI・PMID・医中誌Web文献番号といった、チェックすべきポイントや使用するWebページを押さえれば、大阪大学での所蔵・契約の有無は容易に確認できます。
最後に、大阪大学内で所蔵・契約のない文献の入手方法について紹介します。独自に購入することもできますが、図書館を通じて、大阪大学以外の研究機関等から複写物を取り寄せることもできます。取り寄せサービスをぜひ活用してください。
さらにスキルを高めるために
今回紹介した文献探索や入手方法の講習会以外にも、各種データベースの使い方に関する講習会も開催しています。
例:
- 「Web of Science」、「Scopus」 :世界各国の文献情報を収録しているデータベースです。全分野での調査に活用できます。
- 「CAS SciFindern」:化学関連分野の文献情報に加え、それらに記載された化学物質や有機化学反応の構造情報も検索できるデータベースです。
- 「ProQuest」 :人文社会科学系を中心とする文献データベースです。雑誌以外のコンテンツも幅広く収録しています。
また、図書館Webサイトでは過去に開催されたデータベース講習会の動画や配布資料を公開しています。(※いずれも学内者限定)
文献探索に行き詰ったときは
ぜひ、ご自身の専門分野、あるいは興味関心のある分野の文献を集めてみてください。うまくいくときも、そうでないときもあると思います。例えばデータベース検索でのヒット件数が多すぎる・少なすぎる、あるいは求めている情報を含む文献が見当たらないということもあるでしょう。その場合には、データベースや検索キーワードを選び直したり、文献の絞込み方を変えたりすると結果も変わります。
文献探索や入手方法に困ったとき、アドバイスが欲しいときなど、図書館職員が手助けを行いますので、お気軽に附属図書館各館にご相談ください。相談のお申し込みは、Webフォームからも可能です。ぜひご活用ください。