大阪大学図書館報 第57巻第1号(通巻200号), 2024.3

【LS FORUM】「LSの好きなお仕事」

大阪大学附属図書館では、3館(総合図書館・理工学図書館・外国学図書館)で学生のみなさんの学習をサポートする大学院生スタッフ「ラーニング・サポーター(LS)」が活動しています。
今回のLS FORUMでは、実際に2023年度活動したLSの皆さんの生の声を集めて、LSの活動の中で特に好きなお仕事について特集します!

企画1 LS全員に聞きました!「あなたの好きなお仕事は?」


2023年度に活動してくれたLS計30名に聞きました。ずばり、「LSの活動の中で一番好きなお仕事は?」

第3位「講習会・イベントの開催」(4票)

どんなお仕事?

LSの専門分野や得意分野、経験などを活かして、学部生を主な対象とした講習会やイベントを企画・開催します。

LS講習会ポスター
↑2023年度に開催したLS講習会のポスターのうちの一つです。

投票したLSからのコメント

「講習会は緊張するが、学生さんに自身や他のLSさん、周りの人の経験・知識を伝えることができる良い機会であり、また自分自身も準備や当日の講習を通して学びを得られると感じるため。
普段学習相談に来てくれる学生さんが少なめだと感じているので、講習会・イベントでは一度に多くの学生さんの反応を見ることができ楽しい。」(言語文化研究科 M2)

「LSが、自分が以前に悩んでいたことを講習会・イベントの形で後輩に伝えることで、同じ悩みを持っているかもしれない後輩が、問題解決のための時間を節約し、迷わずに済むようにすることが出来ます。
また、講習会・イベントを通してより多く大学や学術に関する情報を手に入れるようになりますので、このような経験を共有する学びの場は意義があると思います。」(医学系研究科 D2)

【LS担当職員より】
文理問わず人気だったのが、このお仕事でした。過去に開催された「ラーニング・サポーターによる講習会のテキスト」は図書館Webサイト内で公開されているので、ぜひ一度ご覧ください!どれもLSが腕によりをかけて作成した力作揃いです。

第2位「選書」(7票)

どんなお仕事?

LSが、出身学部の学部生にとって役に立つ本、 自分が学部生の時にあればよかったと思う本など、専門分野を活かしながら、図書館で購入する本の選定をします。
また、図書館の中からおすすめの本を選んで、紹介文を載せたポスターを作ったり、展示を企画したりします。

LS選書
↑写真は理工学図書館のLSが2023年度に選書した本です。

投票したLSからのコメント

「企画展示やおすすめ本として紹介する書籍を選んでいると、今まで出会うことが出来なかった興味深い書籍を見つけることが出来るから。また、利用者の興味を惹くことが出来るようなポスター・紹介文の作り方も学ぶことが出来るから。」(工学研究科 M2)

「外国学専攻の多い箕面キャンパスに来ている言語文化学専攻生だということ、また外国学図書館が箕面船場図書館として半ば公共の生涯学習施設でもあること、の計2点をなるべく意識して選書やパスファインダーの作成といった業務にあたるようにしています。
どちらの利用者にとっても、偶然の出会いや思いがけない発見が生まれるきっかけになるかも知れないからです。
多言語・異文化の研究拠点に違った角度からできることがあればよいなと思っています。」(人文学研究科 M2)

【LS担当職員より】
理系のLSから人気のお仕事でした。「LSおすすめの本」はOPACから見ることができます。図書館別に分かれているので、自分のよく行く図書館のLSがおすすめしている本は何か、ぜひチェックしてみてください!

第1位「相談対応」(19票)

どんなお仕事?

学生を対象に、学習相談にのったり、図書館の利用をサポートしたりします。対面相談だけでなく、オンライン相談や、Webサイトの相談フォームからも相談できます。

LSデスク
↑ラーニング・サポーターはこのようなLSデスクという場所で相談対応をしています。

投票したLSからのコメント

「LSに従事する前は、相談対応はLSから相談者への一方方向の情報や経験の共有という認識でした。しかし、実際に従事してみると自分が考えもつかなかったような質問を受けることによって、非常に自分の学びになり、双方向性があると感じました。」(国際公共政策研究科 M2)

「①直接的に役立っている実感が得られる、②質問者の視点が学べる、③自分自身の学習のきっかけにもなる。
継続的にpythonのモデルに関する質問をしにくる方がおり、その方の進捗があるごとにそれに貢献できている感覚が得られてうれしい。
質問者の研究領域(自然現象のシミュレーションモデル)自体は私自身の専門領域(イギリス経済史)と全くかぶっていないが、利用するツールという共通点で会話できるのも楽しい。
また質問に対して、自分自身の知識を言語化しパッケージにすることで、pythonに対する理解が深まっている実感もある。」(経済学研究科 D3)

「数学、物理の課題に関する相談に一番対応しています。他専攻の授業で、自分が全然触れたことない計算方法もありますが、資料を調べて、最終的に対応できました。相談者に対してだけではなく、自分もかなり勉強になりました。」(工学研究科 D3)

【LS担当職員より】
30人中19人のLSの票が入った、圧倒的な人気を誇るお仕事でした。相談者の役に立つだけでなく、LS自身の学びに繋がるうえ、異なる専攻のことを知る機会にもなる、という意見が目立ちました。
今回ご紹介したお仕事以外にも、「パスファインダー」の作成や、図書館ツアーの開催など、LSはあらゆる場面で活躍中です!ぜひご活用ください。

企画2 LSの好きなお仕事エピソード

各館のLSを代表して3名のLSから、好きなLSのお仕事ややりがい、心がけていることについて熱く語ってもらいました。

エピソード1. 私は「講習会やイベントの開催」が好きです!

総合図書館LS 人文学研究科(M2)二宮 晃紀

私の好きなお仕事について

 私の一番好きなLSの仕事は哲学カフェの企画です。私たちLSはカウンターでの業務のほかに、自ら講習会やイベントの企画を立案し実施することができます。その中で私は哲学カフェを行いました。下に示したのが、哲学カフェ開催時のポスターです。哲学カフェとは、哲学の文献や理論から出発するのではなく、自らの経験や素朴なアイデアを他の人と共有しながら一つの事柄についてゆっくり深く話し合う実践(※)です。もともとはカフェ文化の盛んなフランスで生まれた、哲学への市民参加を促進する取り組みでしたが、現在では日本でも一部の学生や研究者、市民団体などが行っています。
 私の取り組み方として、まず短い文章や写真などの素材を鑑賞し、感想を言い合うところから始めます。感想の中から特に参加者の関心がありそうな要素を選び、問いの形(「男/女らしさとはなにか」「どんな時に自信があるといえるか」など)にして対話を進めます。単に意見を言いっぱなしにするのではなく、それぞれ質問や反例を出し合いながら1時間ほどじっくり考えていきます。
哲学カフェポスター
(※)このような哲学に関わる実践を「哲学プラクティス」と言います。ほかにもP4C(Philosophy for Children:子供たちと一緒に「友情ってなんだろう」「なぜ嘘をついちゃダメ?」など小さな疑問について考えていく)やソクラティック・ダイアローグ(一つのテーマについて4日間ほどぶっ通しで対話し、テーゼ「AとはBである」を明示すること)などがあります。

やりがいを感じる瞬間

 この取り組みのやりがいは自分の専門性を活かすことができる点です。哲学カフェは、私の所属する臨床哲学研究室を立ち上げた鷲田清一元総長が輸入したというのもあり、研究室の教員や仲間と哲学カフェを行っていました。ここで得られた知見を他の学部・研究科の方にも共有できたことが嬉しかったです。また属性の異なる方とお話しすることで、「こんな意見もあったのか」と驚くことも多々あります。自分の研究室だけでは得られない多様で幅広い考えはとても良い刺激になりました。なにより参加してくださる方が「楽しかった」と言ってくださることが大きな励みになりました。

エピソード2. 私は「選書」が好きです!

理工学図書館LS 工学研究科(M2)道端 詩

私の好きなお仕事について

 私が好きな仕事はおすすめ本の紹介です。この仕事は、理工学図書館に蔵書されている図書の中で特に読んでほしいものを抜粋し、ポスターを使って紹介するというものです。選ぶ図書はLSごとに個性が出ます。なんだか難しそうな内容を手に取りやすいようイラストを使って紹介するLS、日頃は目を向けないようなことに着眼したおもしろい本を紹介するLSなど、図書館の利用者が多種多様な本に触れられるのがこの取り組みの良いところだと感じます。また、選ぶ私たちにとっても多くの本に触れられる機会となっています。LSになる前に利用した図書と言えばレポートや試験に役立つ専門書がほとんどでした。LSになり理工学図書館にいる時間が長くなると、たくさんの本があることに気付きました。特に私が多く手に取ったのは発表に関する書籍、デザインに関する書籍などを含めたキャリア図書です。これらの図書を読んでいくうちに自身のスキルアップにつながっているのを確かに実感しました。実際、研究室で指導教官から「道端君のスライドデザインは見やすくて、発表も聞きやすい。すごくいいね。」と言っていただけたのも、この活動の中で出会った図書のおかげだと感じています。

取り組む際に心がけていること

 私が特に工夫しているのは、図書を紹介するポスターのデザインです。ポスターは図書館に入ってすぐのホワイトボードに掲示されています。しかし、入り口には他にも魅力的な掲示がいっぱいです。勿論、入り口と言えば建物の顔になるわけですから、見てほしい情報が集約されているのです。その中で図書館利用者に「なんだあれは?」と興味を持っていただかないとだめなのです。かといって、奇抜なデザインは図書館の品位を損ないますのでその匙加減がなかなか難しく、毎度ポスター作成には頭を悩ませます。人の目を惹いて、かつ、手に取ってもらえるような内容を紙面一枚にまとめる、これを達成しなければなりません。情報過多にならないようシンプルなデザインにしつつ、手に取ってほしいターゲットを絞り、「あなたに向けた本です」とアピールするようなポスターを心がけていました。
おすすめ本ポスター
 上に示したのが、実際に私が作成したポスターです。このとき紹介した図書は論文執筆作業がなかなか進まない人に向けて、どうして進まないのか、どうしたら進むのかを実際の研究者が指南するといった内容になっていました。このポスターを作成した時期は、そろそろ学位論文を考えていかなければいけないときでもあり、そういったトレンドも意識して図書を選んでいました。また、実際に本の中で書かれていた止まりがちな4つの段階に対してイラストを添えながら端的に示し、同じような悩みを持った学生に「つまずいていないですか?」と問いかけるようなポスターを作成しました。

エピソード3. 私は「相談対応」が好きです!

外国学図書館LS 言語文化研究科(D3)菊池 泰平

私の好きなお仕事について

 私の好きなLS業務は、学習相談の対応です。私が勤めている外国学図書館の場合、相談者の多くは、外国語学部の学生と留学生の方々です。
 学部生からのニーズはじつに多様で、図書館の利用案内から始まり、文献検索の方法、文献紹介、資料読解に関するアドバイス、レポートや卒業論文の表現や誤字のチェックにまで渡ります。ゼミ発表の予行演習をしたいという相談者には、自分の作成したハンドアウトやスライド資料を持参してもらい、発表を聞いた上でコメントすることもあります。LSと相談者という立場はありますが、指導や評価をする/されるわけではないので、比較的フラットな関係性で肩肘をはらず自由に議論をすることができ、相談を受ける側としても楽しいです。また、知らない地域の文化や言語、学んだことのない学問領域の話を聞くことは、私自身の研究に対するモチベーションにも繋がっています。
 留学生から受ける相談は、主にレポートや論文の日本語チェックです。一見すると、簡単そうに思えるかもしれません。ところが、「てにをは」や句読点の位置を変えるだけでも、文章の意味や論理構成が変わってしまうことがあります。そのため、一段落ずつ、状況によっては一文ずつ、時間をかけて「この部分であなたが言いたいことは何ですか?」と問いかけながら、相談者と一緒に推敲します。これは自分が論文を執筆する作業とよく似ていて、他者の文章をチェックすることが、LSにとっても文章修行の場として役立っています。

取り組む際に心がけていること

 このように、日々様々な相談者が来られますが、相談の依頼を受けるにあたって大切にしているのは、LSの私自身が、①研究者として「文章の書き手」であることと、②図書館のヘビーユーザーであることです。
 前者に関しては、先述の通り、レポートや論文のチェックは、自分が文章を書く作業に通じています。「どうやったら自分の言いたいことが伝わるのか/伝わらないのか」について、相談者と同じ悩みを抱える者として、この課題に真摯に取り組んでいこうと思っています。
 後者についてですが、LSが一人の利用者として図書館を使い倒し、そのサービスやシステム、所蔵文献をよく知っていることが大切かと思います。例えば、私が研究資料として扱うビルマ(ミャンマー)語文献の場合、大阪大学附属図書館が所蔵している資料のおよそ3割程度しかビルマ文字で検索することができません。残りの7割は、米国議会図書館が定めるALA-LCラテン文字表記法に翻字してから探す必要があるのですが、この翻字法はビルマ語を扱う研究者や学生にとって馴染みが薄いものです。加えて、検索時には文字どうしを音節で区切ったり、外国語からの借用語は区切らなかったり…という細かな検索ルールもあります。そのため、図書館で目録作成を担当する職員の方に伺ったり、書誌データの作成マニュアルを参照して得た書誌データの仕組みに関する知識と、日々の研究で培っているビルマ語文献に関する知識を組み合わせながら、文献案内ができるように心がけています。他にも、図書館間の資料相互利用(ILLサービス)やレファレンス・サービスを案内する際は、自分が利用者としてどう使っているのか紹介するようにしています。